天然醸造の醤油造りの道貫く! 自然の力を生かした和食文化と環境保存を目指して

  • 深谷 允
  • 静岡県
  • 木桶仕込み天然醸造の醤油職人
  • Icon side 28伝統食
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天然醸造の醤油造りの道貫く! 自然の力を生かした和食文化と環境保存を目指して

  • 深谷 允
  • 静岡県
  • 木桶仕込み天然醸造の醤油職人
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  • 木桶仕込み天然醸造の醤油職人 とは?

    大豆と小麦、塩を主原料に作ったもろみを、菌の力を借りて発酵させ、醤油をつくる職人のことを指します。
    国内に流通する醤油は、大手メーカーの製造ラインによって生産される醤油が主ですが、手作業により作られるメーカーの醤油は、食へのこだわりを持つお客様から根強い人気があります。

    栄醤油醸造では、国産の信頼できる原料と、地下100メートルから汲み上げた井戸水、そして昔からある木桶を使って、天然醸造の醤油を作っています。毎日使う調味料だからこそ、安心して使ってもらえるものを造ることを心がけています。

    職人・作り手の紹介

    深谷允(フカヤ・マコト)

    静岡県掛川市出身。寛政7年(1795年)に創業した有限会社栄醤油醸造の8代目。名古屋大学で微生物やDNA、遺伝子組み換えの研究をした後、いったんは銀行に就職。経営について学んだ上、実家に戻り醤油の醸造に携わる。

    ▼有限会社 栄醤油醸造
    http://www12.plala.or.jp/sakae-s/index.html

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    作品・ギャラリー

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    ライフストーリー

    希少な木桶仕込みの醤油、子どものころから身近な存在だった

    私は、寛政7年の創業以来、約220年続く醤油屋の長男として産まれました。醤油の香りが漂うなかで育ち、物心つくころには跡を継ぐものだとおのずと思っていました。

    私にとって醤油は常に身近な存在で、小学生のころの夏休みの自由研究は、毎年必ずといっていいくらい醤油造りがテーマなほど。そのため、醤油造りに関しての知識は、手ほどきを受けるより先に自然と身についていたように思います。

    醤油屋と聞くと立派な工場を想像される方が多いようですが、我が家にあるのは古いお蔵。経営もほぼ家族のみの小さな醤油屋です。確かに、現在流通している醤油は工場の大きなタンクで厳密なコンピューター管理のもとに作られていることが多いのですが、私たちは木桶を使った手作業による醤油造りをこつこつと続けています。

    木桶仕込みの醤油は日本国内でも希少です。この伝統を守り、受け継いでいくことが自分の役目であると考えています。



    “丸大豆"と“脱脂加工大豆"の違いは? 近代化で醤油業界も変化

    戦後、時代は高度経済成長期へと差しかかり、モノが無い時代からモノがあふれる時代へと世相が変わり始めました。醤油業界も例に漏れず、大規模化・近代化が進み、化学成分を利用して旨味を加えたり、酵素を添加することで発酵の時間を短縮したりする技術が発達したため、たくさんの醤油が出回るようになりました。

    一口に醤油造りの近代化と言っても、なかなかピンとこないかもしれません。例えば、醤油の原料である“大豆"。私たちは国産の丸大豆を使用していますが、スーパーに並んでいる醤油のラベルをみると、「脱脂加工大豆」と書かれているものがほとんどです。

    脱脂加工大豆とは、大豆から油分をとったもの。醤油造りに使用しない部分をあらかじめ除いてあるのです。また、最近の発酵タンクでは温度管理によって発酵期間を3か月~半年程度に縮めることができます。こうして効率化を図ることで、醤油は安く大量に作られるようになりました。



    時代の変化で選んだ道は、自然の力を利用した天然醸造を守ること

    このように、科学と設備の力を借りれば短い期間でおいしい醤油をつくることが可能です。もちろん、それもひとつの在り方ではありますが、当時の6代目、私の祖父が選んだのは、自然の力を利用した天然醸造による醤油造りを続けて行く道でした。

    100年以上も経った古い木桶を使用し、蔵のあちこちに棲みついた菌たちの力を活かし、四季の温度変化に頼った醸造をする。1年半以上という長い年月がかかりますし、均一化されたおいしさを出すことはできませんが、こうすることでうちの蔵独特の風味に仕上げることができるのです。

    その個性ある味わいのおかげか、うちの醤油を購入いただいているお客さまには食へのこだわりを持った方が多くいらっしゃいます。

    「私の母の代から栄醤油を使っていたの。ここのお醤油でないとどうしてもダメなのよ」などとお声をいただくこともしばしば。
    そんなとき、うちの店をそんなに長く見守ってくださっているか、と温かい気持ちになると同時に、その期待に応えなければと身が引き締まる思いがします。

    ▲醤油蔵の中に佇む6代目。

    ▲2015年4月にオープンした新店舗の前で、従業員一同の記念写真。



    伝統技法を守りながら、珍しい“麹菌"を使った醤油造りにも挑戦

    うちでは看板商品の醤油とは別に、自家採集した麹菌を使ったちょっと珍しい醤油もつくっています。なぜ珍しいかと言うと、醤油とは一般的に「種麹屋」から仕入れた麹菌のタネをつかって醸造するものだからです。

    元々は自然食品を取り扱う会社さんから頼まれたことがきっかけでした。

    天然の麹菌を使用して醤油をつくることは、醸造界の常識から外れること。始めは手探り状態で、可能かどうかですら不安なくらいでした。それでも敢えて取り組んだのは、今の在り方を守り継いでいくためには挑戦していくことも必要だと思ったからです。

    試行錯誤の結果、今となってはたくさんの方から支持を得る商品となり、温故知新の大切さを改めて思い知ることとなりました。工夫と研究を重ねた結果、最近では技術が軌道に乗り、量・質ともに安定した天然菌が採れるようになってきて、とりわけ2015年夏にはこれまでに比べてさらに良い麹が出来上がったので、より質の高い醤油ができそうな予感にワクワクしています。



    環境を受け継ぐことも大事な使命 木桶存続プロジェクトにも参加

    私に課せられた課題は、代々引き継がれてきた設備をいかに大切に使うかということ。醤油造りはモノ造りと違って職人の力が強くものをいう世界ではありません。主役は蔵に息づく菌たちで、私たちは知識と経験をもとにその働きの手助けをしているにすぎないからです。つまり技術ばかりではなく、今の環境を受け継いでいくことが重要と私は考えています。

    例えば醤油を造るのに使っている木桶は100年もの。しかし、木桶を作ることができる職人さんは、ごくわずかになってしまいました。
    そこで、木桶での発酵食品製造にこだわる方々が立ち上がり、木桶を存続させるためにプロジェクトを始動しました。私も参加しています。蔵と道具を次の世代に引き継ぐために、今のうちからできることを模索していきたいです。

    また、食の多様化で若年層の和食離れが進み、醤油の消費自体が少なくなっているのも懸念点です。

    私たちの醤油造りを存続させていくには、どのように醤油を販売するかということにも向き合っていかなければなりません。そのために今、自家採集した麹菌で製造した新商品の醸造にも取り組んでいます。天然菌からとって"天"と名づける予定で、うまくプロデュースして価値ある商品として販売していけたらと考えています。

    編集部からのおすすめ

    醤油は日本人の食文化になくてはならないものです。

    和食が2013年12月にユネスコ無形文化遺産に登録されて以来、再び注目を集めているように見えます。しかし一方で、国内では特に、若者の間で和食離れが進んでいるのも現実です。そのため、化学成分の利用などで味に変化を加え、現代人の味覚に合うよう試行錯誤する製品も増えてきています。

    こうした時代の流れの中、手間も管理もかかるけれど、深谷さんは天然醸造による昔ながらの醤油造りを引き継いでいます。日本でも大変希少です。木桶の環境を整えることも、一筋縄ではいきません。

    「古い醤油蔵は時代遅れのようにみえますが、これは貴重な財産なのです」という深谷さんの言葉は、天然醸造への強いこだわりを感じさせてくれます。

  • 活動報告

    2017-01-11

    2016年12月 新商品「栄醤油 天」の瓶詰めが完了しました

    ご報告が遅くなり申し訳ありません。

    2016年12月、新商品である「栄醤油 天」が仕上がりました。仕込んだのは2015年の冬。それから約一年半かけて、やっと瓶詰めまで完了することが出来ました。

    「栄醤油 天」とは、栄醤油より一層素材にこだわった一品です。

    というのも、栄醤油には元々、弊社の蔵ぐせによってできる醤油の味や香りを気に入ってくださるばかりではなく、体質的に化学調味料を受け付けないために天然醸造の醤油をお買い求めいただく方が多くいらっしゃいました。そういったお声にお応えするべく、とことん自然由来にこだわった醤油を造りたいと考えたからです。

    農薬や肥料をまったく使用しない自然農法で育てられた大豆と小麦。ヒマラヤ山系の伏流水が岩塩の地層に湧き出すことでできた湖の中で長い時間をかけて結晶化した塩を取り出した天日湖塩。そして醤油の発酵に欠かせない麹菌も、通常は純粋培養されたものをいれるところを、弊社の蔵で採れた天然の菌を使用しました。妥協を一切せず、天然素材であることにこだわりすぎるほどこだわってできた醤油。だから「天」と名付けました。

    下の写真に写っているのは三浦伸章さん。自然農法の普及活動を行っている方で、今回自然農法の原料を仕入れるのにあたって全面的に協力していただきました。ゆくゆくは三浦さんが栽培した原料で仕込みをする予定です。

    こちらの商品はまだ市場に出回ってはいません。

    製品化第一号を、サポートしていただいた皆さま(天をご希望いただいた方のみになりますが)にお届けしたいと思います。お礼ギフトの発送は1月末を予定しております。つきましては、個別にご連絡を差し上げますのでよろしくお願いいたします。

    サポートをして下さり、また温かいメッセージを下さった皆さまのおかげで「栄醤油 天」を世に生み出すことが出来ました。

    心より感謝し、御礼を申し上げます。


    ▲三浦伸章さん(画面左)、七代目である父:深谷益弘(中央)と詰めたばかりの「栄醤油 天」を持って

    ▲信頼のおける農家さんによって自然農法で育てられた大豆



    2016年3月22日 「手作り醤油づくり講座」を開催

    名古屋にあるキッチンスタジオ「CHIE'S KITCHEN」さんにて、手作り醤油づくりの講座を開催いたしました。文字通り、皆さんに職人となってMy醤油づくりをしていただく教室です!

    まずは醤油についてのお話をさせていただき、たっぷり知識を学んでいただいた上で醤油づくりに挑戦。材料はこちらで用意した「こうじ・塩・水」の3つのみ。実際栄醤油に使われているのと同じものです。これらを手順通りに混ぜ合わせて発酵させるのですが、私たちがお手伝いするのは最初だけ。皆さんにはしっかり職人のノウハウを伝授しますので、あとはご自宅にて、ご自身の手でじっくりと育てていただきます。つまり環境管理も櫂付きも全部おまかせ。どんなお醤油になるのかは皆さん次第です。完成まで約一年。出来上がりを楽しみにしています。




    2016.1 木桶職人復活プロジェクトに参加

    私のうちの蔵にある木桶は私の祖父(六代目)が生まれたときにはあったというので最低でも100年物。この木桶には長い時間をかけて棲みついた微生物たちが息づいていて、それが栄醤油独特の味や香りを生み出す蔵ぐせというわけです。少し前までは桶を持っているのは時代遅れとまで言われておりましたが、今ではそれが貴重な財産となっいます。

    木桶仕込醤油は業界全体の約1%だそうです。そんな醤油を仕込むための「大桶」ですが、戦後職人が減り続け今は残りわずかとなってしまいました。木桶の寿命は100年~150年と言われているので、醤油に限らず日本全国の蔵元から桶がなくなってしまう可能性が高いのです。わたしのうちも先祖が残してくれた桶のお陰で醤油を仕込めていますが、孫やひ孫の代ではそれができなくなってしまうかもしれません。恥ずかしながら私もこのようなことを本気で危惧しはじめたのは醤油屋に戻ってきてからです。

    そんな中、木桶職人復活プロジェクトを立ち上げたのが小豆島のヤマロク醤油の山本康夫さん。2012年に大阪の藤井製桶所(2020年廃業予定)にて修行し、2013年から新桶作りをスタートさせたそうです。そこでわたしもこのプロジェクトに参加させて頂くため、今回は第3回で桶を合計4本組み上げるということで2016年1月25日から28日までヤマロクさんにお邪魔してきました。

    4日間の滞在でしたが、寒空の下、全国から醤油屋さんを始め、桶屋さん、ラーメン屋さんが集まり大変熱い場となっていました。実際に桶を作り上げてしまう山本さんの行動力に敬服する一方で、私も負けてられないという思いがこみ上げてきました。

  • サポーターからの応援メッセージ

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  • コミュニティ

    発酵業界の繋がり~千葉から寺田本家さんご来店~

    先日、千葉県の神崎町で酒造元を営む寺田本家の24代目・寺田優さんがご来店されました。
    2016年1月、小豆島・ヤマロク醤油さんで木桶復活プロジェクトに参加したことによるご縁で、わざわざ訪ねてきて下さったのです。

    畑は違えど同じ発酵業界の仲間として、何かの繋がりをきっかけに、こうして縁が続いていくということをとても嬉しく思いました。


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  • プロフィール

    作り手の紹介

    深谷允(フカヤ・マコト)

    静岡県掛川市出身。寛政7年(1795年)に創業した有限会社栄醤油醸造の8代目。名古屋大学で微生物やDNA、遺伝子組み換えの研究をした後、いったんは銀行に就職。経営について学んだ上、実家に戻り醤油の醸造に携わる。

    ▼有限会社 栄醤油醸造
    http://www12.plala.or.jp/sakae-s/index.html

    直近の目標

    木桶だと管理の仕方次第で品質にムラができてしまうため、高い品質で造り続けられるよう技術を向上させること。

    将来・未来の目標

    8代目として栄醤油醸造を続けていくこと。木桶をはじめとした代々引き継がれている設備を大切に使い、蔵とそこに棲まう菌たちを守っていくことで、天然醸造による醤油づくりを次世代に繋いでいきたいです。

  • 作品ギャラリー

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